いつも電話なんてかかってこない兄からスマホに着信が来た。
えっ、なんか嫌な予感・・・。
電話の内容は、
「実は俺横手山スキー場の最高峰で遭難して15時間後に救出されて今病院に運ばれたんだ」と。
そ、そ、遭難?!😱
私はスキーやらないのでよく知らなかったけど、横手山って日本のスキー場の中で最高峰らしい。
兄はスキー歴が長く一人でも行くほどの上級者。
その日は三泊四日の四日目だった。せっかくだから上級者コース山頂のおいしいパン屋でパンでも買うかと向かったらしい。
そして午後の15時過ぎに山頂のパン屋でパンを買って店を出たら急に天候が悪くなり、あたり一面あっという間にホワイトアウトで何にも見えなくなってしまった。
一人で行ってたので、誰にも頼ることもできないし、スマホの充電はなくなってしまうし、胸まで積もった雪の中で、穴を掘り時々身体を動かして体温をあげ、トイレもなるべく行かないようにして何とか朝までしのいだそう。
でも流石に夜になって止まない雪がどんどん積もっていき、兄は流石に死を覚悟したらしい。
翌朝運よく遠くに圧雪車が見えて、兄は力を振り絞って大声で助けを求めた。
でも圧雪の音で気が付いてもらえず圧雪車は遠くに行ってしまった。
しばらくして、さっきの圧雪車より近いところに除雪車が見えた。
今度こそとまた力を振り絞って助けを求めた。
「おーい!助けてくれー」
声が届いた!
無事救助され、救急車で病院へ。
自分では救急車のところまで歩けると思っていたが、身体の衰弱と凍傷を考えて担架が用意されていて・・・・。
病院に着いてブーツを脱いだ時、足が痛くて歩けないことに初めて気が付いた。
先生から
「両足が重度の凍傷ですが、あの寒さの中で生きてたことが奇跡です」と・・・。
凍傷なんて無縁な言葉だったから私は急いでネットで調べた。
恐ろしい。
凍傷ってあまり治療法が進んでないので点滴と塗り薬と飲み薬程度しかない。
そんな感じでしばらく入院となってしまった。
二週間後むくみは少し和らいだが、足の指は全部神経が通ってなくて動かない。
指に感覚がないからどうやって歩くかわからなくなってしまったと・・・。
今後状態が悪化した時は最悪切断するかもと医師から伝えられ・・・・。
「とりあえずできることはすべてしたので、今後は地元の病院で診てもらってください」と・・・・。
晴天でも空気がひんやりです。
雪国ですね。
長野電鉄特急スノーモンキー。
一時間に1本なので病院からは時間に合わせて出ないと大変なことになります。
雪の中私は北陸新幹線に乗って、車いすの兄を迎えに行き茨城へ帰ってきた。
車いすはネットでレンタルして・・・。
公共の場所では車いすが通れるところを探しながら・・・。
エレベーター、エレベーターって・・・。
その時初めて身障者の気持ちが少しわかった気がした。
本来なら車で病院に迎えに行きたかったけど、雪道慣れてないからやはり無理だと判断し・・・。
ほんとに大変だった。
当時NHKのニュースでも流れたし、長野県警のホームページにも掲載されてて・・・・。
二か月後の足の状態。表面の皮膚は脱皮しましたが、神経はなく指は動きません。
足の裏の皮膚は一通り剥けたけど、まだ名残があります。
あれから一年。
先日テレビで長野県の雪崩のニュースを観てあの時のことがよみがえってきた。
恐ろしい・・・。
その後兄は地元の病院に転院して点滴と薬の処方、リハビリにも行き・・・・。
むくみはなんとかとれたけど足の指は一向に神経がない。でも血液は回復したので切断だけは免れることができた。
兄は、今までどうやって歩いてたのかわからなくなってしまったと・・・・。
足の指って大事なんだな・・・・。
人生何が起こるかわかりません、まだまだスキーシーズンですがみなさま気を付けて楽しんでください。
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